睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)は眠っている間に無呼吸が起こる疾患で、頭文字から「SAS(サス)」とも呼ばれています。
医学的に睡眠時無呼吸症候群とされるのは、無呼吸がⅠ晩に30回以上、または1時間に5回以上ある状態です。無呼吸は、気道の空気の流れが止まる気流停止が10秒以上続くことで、1晩の睡眠は7時間以上です。
睡眠時に起こるため、無呼吸があっても自覚されることはほとんどありません。いっしょに眠るご家族や友人からひどいいびきを指摘されてはじめて気付くケースが多くなっています。自覚されないまま進行させてしまっている方も少なくないと考えられています。
睡眠時無呼吸症候群は無呼吸が睡眠時に起こり、深刻な心疾患や脳血管疾患のリスクを大幅に上昇させてしまう病気です。さらに、起きている間に生じる症状も日常生活を大きく蝕んで、ご自分や周囲にも危険を及ぼす可能性があります。こうしたリスクを避けるためには、早期発見と適切な治療が不可欠です。効果の高い治療方法が登場していますので、いびきを指摘されたり、下記のセルフチェックでリスクが高い場合には、できるだけ早くご相談ください。
セルフチェック
6つの質問でSASリスクをチェックしましょう。
- 毎晩大きなイビキをかきますか?
- 「睡眠中に呼吸が止まっていた」と指摘されたことがありますか?
- 昼間、眠くなることがありますか?(居眠り運転をしそうになったり、会議中にうとうとしてしまうことがよくありますか?)
- 朝起きた時、寝たはずなのに疲れが残っている感じや頭重感・頭痛はありますか?
- 若い頃より体重が増えて顔つきが変わったと言われますか?
- メタボリック症候群の傾向はありますか?
判定
- ①~④が1つ以上ある方:SASの可能性があります。
- ⑤⑥が1つ以上ある方:SASの危険性を高めている可能性があります。
セルフチェックの判定を踏まえて、SASの可能性がある方は睡眠時無呼吸簡易検査を受けることをおすすめします。ご相談ください。
時間帯別にみる症状
寝ている間
- いびき
- いびきが止まる、その後大きないびきが再開する
- 呼吸が一時的に止まる
- 呼吸が乱れる、息苦しい
- むせることがある
- 何度も目が覚める
- 寝汗がひどい
起きた時
- 口が渇く
- 頭痛
- 熟睡感がない
- すっきり起きられない
- 身体が重いと感じる
起きている時
- 強い眠気
- からだがだるい、倦怠感がある
- 集中力の低下
- 疲労感が続く
簡易検査で診断が可能です
当院では、ご自宅で睡眠時に検査ができる簡易検査機器の貸し出しを行っています。流れは以下となります。
簡易検査に必要な検査機器を業者へ依頼しご自宅へ郵送いたします。ご自宅で検査をしていただきましたら、業者へ送り返してください。簡易検査の結果は当院に届きますので、後日結果を聞きに来ていただけきます。
手指や鼻の下にセンサーを装着して、睡眠時の呼吸やいびきの状態を記録し、結果を当院で分析して睡眠時無呼吸症候群の可能性を調べることができます。この簡易検査では、AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)の数値として結果が測定されます。
簡易検査で確定診断が難しい場合は、専門の医療機関に1泊入院して「終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査」による精密な検査を行います。
AHIの数値 | 重症度 |
---|---|
~20 | 軽症 経過観察、または口腔内装置(マウスピース)による治療 |
20~40 | 中等症 終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査が必要です |
40~ | 重症 CPAP療法により、睡眠時の無呼吸を解消します |
※軽症の場合でも、血中の酸素濃度が低いケースでは終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査を受けるようお勧めします。
このような症状に注意しましょう
睡眠中の酸素不足による脳や身体へのダメージ
睡眠は脳や身体の十分な休息に不可欠であり、質の良い睡眠はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めてくれます。睡眠時に呼吸が何度も停止してしまうと脳を含め全身の酸素が不足し、それを補うために心拍数が上昇します。繰り返される酸素不足と心拍数上昇により、睡眠中の身体には大きな負担がかかります。また無呼吸ではっきり目覚めてしまうことはほとんどありませんが、脳や身体が断続的に覚醒して睡眠の質が著しく低下します。
これによって、十分な睡眠時間をとっていても慢性的な睡眠不足になり、起床時の疲れ、日中の抵抗できないほど強い眠気、集中力の欠如などを引き起こします。お仕事や生活全体に悪影響がありますし、睡眠時無呼吸症候群が原因で起きた鉄道やバスの大事故なども報道されています。ご自分や大切なご家族の安全を守るためにも、早めの治療が必要です。
当院の治療
CPAP療法
「CPAP(Continuous Positive Airway Pressure/シーパップ)」は、装置から空気を常に送り出して、気道を押し広げて閉塞を予防する装置です。呼吸の状態に合わせ、空気の圧力を自動的にコントロールすることができます。停電時も、装置が止まることは内ので安心して使用できます。
AHIの数値が40以上の重症の方は、保険診療で治療が受けられます。副作用がなく、睡眠時の酸欠が解消し、質の高い睡眠を得られるようになるため、慢性的な疲労感や集中力の欠如、日中の強い眠気などの症状を劇的に改善できます。
マウスピース
軽症であり、この治療によって改善が見込める場合に行います。睡眠時に特殊なマウスピース(スリープスプリント)を装着することで下顎を上顎よりも前方に出すように固定し、上気道を広く保って呼吸しやすくします。